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ターの開設後も研究・研修の中心となった長峯晴夫氏は、その著書で次のように述べている。
「名古屋にUNCRDを実現させた最大の力は、当時の愛知県知事桑原幹根氏を中心とする地元官・財界の積極的誘致策であった。国家間組織である国連に対して、中央政府に先がけて地方自治体が直接交渉を行ってことを進めたという意味で、UNCRD設立をめぐる交渉の経緯は国連史上異例のことであったとされている。一方また、国連の地域開発調査訓練計画を推進した国連側の中心人物ワイスマンが大の知日・親日家であり、1960年の三大都市圏調査団(首都圏、近畿圏、北九州圏)のメンバーとして、また1964年の中部圏視察団(愛知・岐阜・三重のいわゆる3県合併問題へのアドバイザーとして建設省が招へいした)の団長としての訪日などを通じてわが国の地域開発動向に通暁していたことが決定的な影響力を持った。」(注1)

 

2 国際連合地域開発センターの活動
国連地域開発センターの目的及び活動は、センターの設立を決めた1971年6月の日本国政府と国際連合との間の協定の第3条に定められている。それは今日の活動の目標として次のように要約されている。
(a) 開発途上国の地域開発能力向上のため、当該各国の地域開発の携わる中堅・幹部行政官などを対象に研修を行う。
(b) 開発途上国の地域開発が直面している問題をテーマに、教材開発をかねた調査研究を行う。
(c) 開発途上国の計画に携わる政府機関、NGO(非政府組織)、大学等の要請に基づき各種助言を行う。
(d) 開発途上国が地域開発計画に関する情報を入手できるよう、情報交流のネットワークを確立する。
(1) 研修
地域開発計画に関する研修は、国連地域開発センターの最も基幹的な事業であり、1972年の第1回研修から現在までに24回の研修コースが実施され、アジア、中東、南太平洋、アフリカ、ラテンアメリカの60カ国から693人の計画機関の実務者、研修指導者、研究者などが参加している。
第1、2回研修では地域開発の理論に関する講義と並んで、中部地方の開発計画の事例研究を中心とした研修が行われている。当時は「新全国総合開発計画」が策定されて間もない時期で、それを受けた各県の計画も進められていたので、その経験が研修の素材として使われた。
第3回から第6回までの研修は、実際の地域開発の事例を教材に行われたが、事例は日

 

 

 

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